東大寺二月堂の「修二会(しゅにえ)」は「お水取り」とも呼ばれ、
奈良の春を呼ぶ風物詩として有名ですよね。
「お水取り」なのに、舞台の欄干で振り回される豪快で迫力満点の
「お松明」の印象が強いためか、「お水とどう関係があるの?」と
思っている方がいるかもしれません。
謎の多い東大寺の修二会について紹介しましょう。
☆ 東大寺の修二会って?
東大寺の修二会は752年から、ずっと途切れることなく
続いている宗教行事です。
なんと奈良時代から始まり、今年・2015年は1264回目を
迎えます。
東大寺が大火災にあったときも、修二会だけは絶えることなく
続けられてきたんですって!
伝統もここまで続くとすごい、としか言いようがないですね。
東大寺を開いた良弁僧正(ろうべんそうじょう)の弟・実忠和尚
(じっちゅうかしょう)が始めたといわれています。
修二会の正式名称は「十一面悔過」(じゅういちめんけか)。
人々が日常犯しているさまざまな罪を、十一面観世音菩薩の前で
告白し、悔い改めることを誓うという意味です。
修二会では「練行衆(れんぎょうしゅう)」と呼ばれる僧たちが、
人々の代わりに懺悔し、国家の安泰や五穀豊穣などを祈ります。
今は3月の行事ですが、昔は旧暦の2月に行われていたことから、
「修二会」と呼ばれ、建物は二月堂と名づけられたそうです。
☆ 東大寺 修二会の主役 練行衆って?
修二会を担うのは練行衆と呼ばれる人たちです。
練行衆は11人。
東大寺とその末寺の僧侶の中から選ばれます。
12月26日になると、翌年の練行衆が発表されます。
11人の練行衆は「四職」と「平衆」に分かれ、
それぞれの役割を担います。
練行衆はメインの修二会の前に、いろいろな準備を
しなくてはなりません。
☆ 東大寺 修二会の椿
2月20日から2月末日まで、練行衆は「別火坊」で合宿をします。
「別火」とは文字通り、俗世界の火は用いないで、新たな別の火を
起こすというところからきています。
別火は修二会の前行にあたり、練行衆は、声明の練習をしたり、
仏前に飾る椿の造花などを作ったりして、修二会の準備をします。
修二会で飾られる椿は独特です。
花の芯は黄色の和紙を巻いた木を使い、赤と白の和紙で作られた花びらを、
芯に交互に貼り合わせていきます。
400個ほどの椿の花ができると、本物の椿の生木に取り付けます。
☆ 東大寺 修二会のスケジュール
修二会は3月1日から14日まで2週間行われます。
テレビのニュースで紹介されるのは、3月12日の大きな籠松明が
登場する場面がほとんどですが、実はお松明は1日から14日まで
毎日あげられています。
籠松明は、長さ約8メートルで重さが70キロくらい。
普通のお松明は40キロくらいだそうです。
ちなみに、お松明を舞台の欄干で振りかざしている人は、
練行衆ではありませんよ。
練行衆が二月堂で行をするための、上堂の道明かりとして、
童子と呼ばれる人たちが担当しています。
練行衆一人一人に、お松明は1本ずつ灯されます。
だた、日のよってお松明の本数と開始時刻は違いますので、
ご注意ください。
〔3月1日~11日、13日〕19時開始 10本 約20分間
〔3月12日〕19時半開始 11本 約45分間
この日は大きな籠松明が登場します。大混雑が予想されます。
早い目に行かれることをお勧めします。
〔3月14日〕18時半 10本 約10分間
短時間に、連続してお松明があがっていきます。
お松明の火の粉を浴びると、この1年は無病息災だそうです。
☆ 東大寺「修二会」お水取り だったん
それでは、肝心のお水取りは、いつ行われるのでしょう?
お水取りは、3月13日の午前1時すぎから閼伽井屋(あかいや)と
いう建物で行われます。
そこにある井戸から「お香水」を汲み、二月堂内陣に納めます。
そして、お香水は十一面観音菩薩に供えられます。
お水取りは本来、行の一部だったのですが、いつしか修二会全体を
指すようになりました。
さて、籠松明以上にすごいのが、「だったん」かもしれません。
なにしろ、二月堂内陣で、松明を引きずり回るのですから。
練行衆が「だったん帽」をかぶって、火天と水天に扮します。
そして、法螺や鈴などの音に合わせて飛び跳ねます。
火がついた松明をもった火天は、それを引きずりながら内陣を
回るのです。
火事にならないかと心配になるくらい、ものすごく大胆な行ですよ。
だったんが行われるのは、3月13日の午前3時ごろ、
14日の午前0時45分ころ、15日の午前0時ごろからです。
深夜になりますが、見学ができます。
15日の朝は「だったん帽子いただかせ」が行われます。
赤ちゃんや幼児の頭に、だったん帽子をかぶせて健やかな成長を
願うのです。
☆ まとめ
東大寺の修二会は、まさに火と水の儀式です。
それも、日本の伝統とは思えないくらい、とても大胆で迫力満点!
奈良時代から続いているなんて、本当にすばらしい行事ですね。